2007/01/06

「スキャナー・ダークリー」

フィリップ・K・ディック原作の「スキャナー・ダークリー」見て来ました。

ディックは一番好きな作家。今までいくつかの原作が映画化されたけれど
(「ブレードランナー」「トータル・リコール」「スクリーマーズ」「クローン」「マイノリティ・リポート」「ペイチェック」)
どれも、映画としては楽しむ事が出来る作品だったけれど、ディックのSF的なアイディアやアイテムだけを利用しているので、本質的な部分が描かれておらず、落胆させれるものばかりだった。「クローン」はシンプルで原作も生かされていて良かったけど、あまり話題にならなかったし。

「スキャナー・ダークリー」は、東京創元社から出版された「暗闇のスキャナー」の方が馴染みがあるんだけど、初めて読んだ時は、他のディック作品とは違った雰囲気や、ドラックを扱っていると言う事もあって、あまり好きな作品ではなかった。映画化される事を知った時も「何故、この作品が?」と思ったし。
しかし、映画化に合わせて、新訳でハヤカワ文庫から再版されたものを、6年ぶりで再読したところ、読み始めたら止まらず夢中で読んでしまった。

リチャード・リンクレイター監督が、実写映像にデジタル・ペインティングを施すアニメ映像として、映画を作成していると知り、トレーラー映像も何度も見たが、ディックの世界を表現するのにピッタリのイメージで、こんなに公開が待ち遠しかった映画はない。


a001.jpg舞台は、ドラッグが蔓延している近未来のアメリカ。覆面麻薬捜査官のボブ・アークター(キアヌ・リーヴス)は、自らジャンキーとなりドラッグの世界へと深く潜入していく。やがて、おとり捜査をしていたはずの彼が、自らを監視するハメになってしまう。彼の中で捜査官とジャンキーという2つの人格が分裂を始め、次第に自己破壊してゆく・・・。

感想はここから。ネタバレあり。

前半部分のアークターと仲間達の、コミカルでグダグダな会話や行動は原作に沿いつつもうまくアレンジされていて、面白かったし、アークターの自己分離が進む後半は、シリアスな静けさと混乱している雰囲気も出ていた。

アニメの効果も、現実感と非現実部分が入り乱れる部分を表現するのに、適切だったと思う。今まで見てきたディック原作の映画は、自分の中にあるイメージとかけ離れているものが多かったんだけど、これは非常に近いものがあり、ラストで”物質D”の原料である青い花が咲いているシーンもイメージと合っていて、グッとくるものがあった。

エンドロール前の「献辞」は原作の著者覚え書きの引用。仲間達の名前と死因が流れる。
気が滅入るような、とにかく悲しい気持ち。原作を再読した時と同じ気分だ。
ただの、アンチドラック映画じゃない。ディックの悲しみが詰まった重たい映画だ。



原作を読んでないと分かりにくいのかなぁ・・・とも思ったけれど、一緒に行った旦那は事前情報なしで、今まで私が誘った映画の中で一番良かったと、大絶賛だった(ちょっと意外だったけど)。

ディックの作品を映像化するには、SFXじゃなくて、今回のような映像技術で表現するのが合うなぁ。そもそも、見た目の華やかさじゃなくて、人間の心理的な部分の表現に引きつけられる作家だから。

やっと満足出来る映画を見る事が出来た。この映画を作ってくれたリンクレイター監督に、ありがとう!と言いたい。


公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/ascannerdarkly/

コメント

非公開コメント

ちささん
はじめまして!コメント&TBありがとうございます♪

>「ディックファンの想いは同じだ!」
ですね!私もやっと、満足の出来る映画に出会えて嬉しいし、ファンの方々の評判もいいので嬉しいです。

>リアルな分、主人公がディックに見えて泣けてくるんですよね。
自伝的要素もありますからね。私も主人公とディックが被って、とにかく悲しくて辛かったです。

本当のディックの良さ、凄さを知ってもらうにも、もっと多くの人に見て欲しいですね~!

はじめまして

mariさん、はじめまして!
エントリーを読んで
「ディックファンの想いは同じだ!」と
嬉しくなってTBさせていただきました。
「暗闇のスキャナー」はSF要素は少ないんですが、リアルな分、主人公がディックに見えて泣けてくるんですよね。
映画としてなかなか受け入れられてない感じですが、ブレードランナーのように時間をかけて、好きになる人が増えて欲しい映画です。

logos-sequenceさん
コメントありがとうございます!
公式サイトで、公開場所を見た時にガッカリしました。規模が小さすぎですよね。都内って言うか、関東でシネセゾンだけですから。もっと、多くの人が見れるようにして欲しいと思います。
もうすぐ終わっちゃいますから、是非見に行ってください!

スキャナーダークリー

初めてカキコします。
エレコーゼあらため。logos-sequenceです。
スキャナーダークリー、都内では
シネセゾンだけらしい。
行きたいのだけれども、なかなか、
行きづらいです。。

メイさん
うーん、書いておいてなんですが、あまり万人にお勧めできる作品ではないんです・・・(苦)。
扱ってるネタもドラッグだし、分かりにくさもあるかもしれません。
でも、機会があれば、この作品に限らず原作に触れてみて欲しいです。ハマったら病みつきになると思いますよ!

なんだか、興味を惹かれる作品ですね!
原作を読んでみたくなりました。
内容も濃そうですね。

とらねこさん
コメント&トラバ返しありがとうございます!
監督さんのファンの方にもディックの良さが伝わって、私も嬉しいです。お気に入り登録もありがとうございます!
とらねこさんの見てる映画も、興味のあるものが多いので、また伺わせて頂きます!ヨロシクお願いします♪

コメント&TBありがとうございました♪

ディックファンの方のレビューを読ませていただき、とても嬉しく思います。
現実と非現実が入り混じる映像に、混乱した人が多いようなのですが、この辺りを狙って作られているその手法に、私もとても満足してしまいました。
『此処ではない何処か』というブログタイトルも、とても素敵ですね★
訪問の記念に、お気に入り登録させていただきました。
これからも、よろしくお願いします。

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